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事業継承の具体策

株価対策

多くの場合が非上場会社かと思います。非上場会社の株価の評価は相続税・贈与税の計算上「取引相場のない株式」に分類され、 評価方法は純資産価額方式・類似業種比準方式・配当還元方式に大別されます。類似業種比準方式のほうが株価が低めに評価される傾向にあります。

このため、株価対策ではこれらの評価方法の違いを理解することがポイントです。 また、会社の規模(資産総額・従業員数・売上高等)により適用できる評価方法は変わってきます。

大会社 類似業種比準方式または純資産方式
中会社 類似業種比準方式と純資産方式の併用方式
(併用割合:類似0.6~0.9、純資産0.4~0.1)
小会社 純資産方式または類似業種比準方式と純資産方式の併用方式
(併用割合:0.5)
1. 純資産方式
純資産価額方式は、会社の総資産や負債を相続税の評価に洗い替えて、 その評価した総資産の価額から負債や評価差額に対する法人税等相当額を差し引いた残りの金額により評価する方法です。
2. 類似業種比準方式
類似業種比準方式は、類似業種の株価を基に、評価する会社の一株当たりの配当金額、利益金額及び純資産価額の三つで比準して評価する方法です。
3. 配当還元方式
主に経営に従事しない少数株主に対する評価方法で、過去1~2年の配当金額に基づいて評価する方法です。会社の後継者となる相続人にはまず適用されません。

いかに評価額を抑えるか

前述の「株価対策」の項目で書いたように、類似業種比準方式は純資産方式と比べると、評価額が低く出る傾向があります。
※配当還元方式は少数株主向けの評価方法のため本項目では除外

このため、借り入れによる総資産増加等により大会社もしくは中会社で類似業種比準方式の併用割合がより高いものへ移行させ、 類似業種比準方式の適用が可能となった時点、もしくは併用割合が高くなった時点で、企業再編税制・連結納税制度の利用等により、 類似業種比準方式による評価額自体を下げるよう検討します。

特定事業用資産の評価の特例の活用

相続又は遺贈により一定の要件を満たす取引相場のない株式又は出資を取得した場合で、 この特例の適用を受けることを選択した場合、一定の要件のもと、当該株式又は出資に係る相続税の課税価格が減額されます。

この特例は、また、相続税申告時までに遺産分割が確定していることが要件のひとつのため、「争族対策」が必須になります。 また、この規定は前述の「小規模宅地等の減額」と併用する場合には減額金額に制限があるため注意が必要です。

↓表にする↓ 減額割合
被相続人が相続開始直前に有していた株式又は出資のうち、相続の開始の時における発行済株式の総数又は出資の合計額の3分の2に達するまでの部分(10億円を限度とします)について10%減額

代表取締役への退職金の支給

生命保険金と同様に退職金に対しても「500万円×法定相続人の数」の非課税枠が設けられています。 このため、その分だけでも退職金を支給しておくと有利です。
また、退職金の原資がないと予測される場合には、事前に会社で生命保険に加入しておくと良いでしょう。※契約者:会社、被保険者:創業者とします

自社株売却による納税資金の確保

平成13年の商法改定で金庫株が解禁になり、企業は目的を問わずに自社株を取得・保有できるようになりました。 金庫株とは、会社が自社の株式を買い戻し、自社で保有し続ける自己株式のことです。

会社のオーナーの相続対策にあたって、会社は現預金を充分に持っているにも関わらず、 オーナー自身の所有財産は自社株しかないという場合があります。 こういった場合には、オーナーの所有株式をその会社に自己株として売却するという方法があります。

益には所得税が課税されますが、相続税の申告期限から3年以内に相続税の課税対象となった非上場株式をその発行法人に売却した場合には、 所得税法の減額が受けられます。このため、株式評価が下がる可能性を前提に自己株売却を相続対策として相続開始前に行うか、 相続開始後に行うかは要検討項目です。

1)相続人が株式の発行法人に株式を譲渡した場合
相続人が株式の発行法人に株式を譲渡した場合
2)相続人が相続した株式を国に物納し、その後国から株式の発行法人が自己株式(金庫株)制度を活用して買戻す場合
相続人が相続した株式を国に物納し、その後国から株式の発行法人が自己株式(金庫株)制度を活用して買戻す場合